Toon表現とシェーダー

※このエントリは中級者向けです。一応初心者でもわかるように記していきますが、ある程度の3DCGモデルの概念とシェーダーの概念を知っている必要があります。ご了承下さい。
しかも長いです。

■ Toonと一言で言っても……
 そもそもMMDの基本シェーダーがToonベースであり、それをそのまま使っても良い訳です。あとはそれを好みとするか、そういうものと理解した上で使うか、他シェーダーを使うか、という事になります。
 質感に関しては良し悪しであはなく好みの問題なので一概に括る事は難しいです。

 さて、以下の話をするにあたってこの前提は大事で、これから話す事はあくまでも個人的趣向に基づいている事を理解して頂く必要があります。

 MMDのデフォルトシェーダーは好きか嫌いかで言えば、好きな方ではあります。ですが、付属のモデル設定の影響も大きいのか、その後にリリースされているユーザーモデルもそれを基準としている事が多いです。
 デフォルトシェーダーは好きではありますが、「輝度が高い」という意識はずっとありました。
 特にAutoLuminousやDiffutionなどと組み合わせると、画面全体の輝度が高くなり、ふわっとした感を出すのは楽ですが、落ち着いた感を出すのが難しい、また色味がその分薄れてしまうという問題がありました。
 別な言い方をすると、比較的リッチな感じを出すのは楽ですが、しっかりと見せよう(特に色味)とすると、コントロールが難しいというのがあります。

Toon_001

 画面における、陰影の割合。
 これが画作りには重要な役割を果たします。


 陰影、というとすぐに思いつくのは、セルフシャドウ系かもしれません。
 MMDには標準でセルフシャドウがありますし、高品質を目指すならExcellentShadowなどもあります。
 また、SSAOなどもありますね。
 これらの影を使えば、より楽に立体感を出す事は出来ます。

 が、陰影という部分で、特にアニメ的・Toon的な表現をするにあたって、SSAOやセルフシャドウの扱いというか、その表現を良とするか否とするかは難しい判断です。
 何せ影が二重になる訳ですから。

Toon_03Toon_02

 影が加わる事により、立体的に見せる事ができます。また演出的にも影の存在は重要です。
 あとはその影の出方や出る位置、濃さなどをどうコントロールするかです。

 MMDのToonは簡単に言うと、光が当たってる所と暗くなってる所を2段階に切り分けて表示します。
 設定の状態は、ご存じToon.bmpを使用しており、PMD/PMXEditorなどで材質毎に設定しているアレですね。
 最近ではMMD標準Toonだけではなく、独自のToonを設定してパッケージに付属させていたり、場合によっては独自シェーダーとセットになっている事もあります。

 Toon設定の変更だけではどうもしっくりこない、という時にはシェーダーと組み合わせる事も増えてきました。
 シェーダーの種類も豊富になり、かっつりとセルアニメ調なToonから、リッチでなだらかな質感(いわゆるエロゲ塗り)なものまで多種にわたります。



(セルフシャドウオフ。照明方向をミクさんの左手側からに設定)

大抵の場合、特に標準モデル系であればそのままシェーダーを割り当てても良い感じで表示されるので、設定を弄らなくても、それっぽく見えたりはしますが、ことユーザーモデルに適用させるとすると問題が出てきたりします。

 技術的な問題としては、元々ある材質設定やToon設定と変わってしまう事、心情的にはモデラーがセットアップした内容を一部無視する事になるという事。
 前者はシェーダーを設定すればいいのですが、後者は何とも言えない時も……。
 後者はともかく、ここではシェーダーに触れていきます。

 シェーダーの再設定は結構難しい場合もありますが、AlternativeFullやHAToonには最初から設定補助用のツールが付属されています。

 さて、ここから沼の始まりです。


■ Toonの設定(AlternativeFull)

 拙作では主にHAToonの方を使っていましたが、今回はAlternativeFullにチャレンジです。AlternativeFullについては前にエントリでも記しましたが、実運用したのは初めてとなります。
 概要説明はこちらのエントリをご覧ください。
Blog_20131021_09.png
 様々な設定項目がありますが、このシェーダーでのキモは『シェーディング1』タブにある『シェーディングヒント用テクスチャ』です。
 このテクスチャの設定と格闘する事で、後に設定する部分も生かされてきます。なので、このシェーダーを使う時には、ペイント系ソフトが必須という事になります。
 付属のヒントテクスチャもありますので、そちらを参考にすると良いでしょう。
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 この一枚のテクスチャで陰影の傾向・ハイライトの傾向が決まります。
 このテクスチャではグラデーションが掛かっていますが、かっつりとアニメ調というか二段階にしたい場合は、グラデ部分を無くします。
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 ここまではいいのですが、問題はここからです。

 まず陰影の境目ですが、くっきりと分けた方が良いのか、それとも1ドットでも中間を置いた方が良いのか、これでかなり影の出方が変わります。影との境目をシャープにするか、ほんの少しだけ柔らかくするかの差ですね。
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 さらに、白の部分と黒の部分の割合を変える事により、影部分となる閾値を変える事ができます。
 服などは半々くらいでも良いのでしょうが、肌や、特に顔などは影が多く乗りすぎると印象が悪くなったりします。

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 これでやっと丁度いい具合の影割合ができたと思ったら……
 当たり前ですが、モデルは動きますし、照明の設定でも影の出る部分は変わってきます。静止状態で良しとしても、動いたら「アチャぁ」なんて事はザラにあります。

 汎用的な設定というものは、“無い”という認識で、動き回っても丁度良い影と光の割合を、ペイントソフトと共に行います。
 1ドットの差でも結構大きく変わりますので、この辺りは試行錯誤してみて下さい。

 これがモデル全体に適用できるなら良いですが……そうもいきません。
 全材質に個別シェーダーを、とまでは言いませんが、肌・髪・服・その他くらいには分けた方が良いでしょう。
 配布されている各サンプルシェーダーに、そういった専用のものが付いているのが、この理由です。

 AlternativeFullにおけるシェーディングヒントテクスチャでは、横方向をベースに陰影をつける形になりますが、縦方向を無視している訳ではなく縦方向の変化も読み取ります。どうなるかは──お試しください。

■『GLIDE』におけるケーススタディ


 さて、追い込みはまだ甘く感じる所もありますが、AlternativeFullを活用した動画となります。
 金剛さんだけでなく艦体の方にもシェーダーを掛けています。
 今回は、ExcellentShadowやセルフシャドウを一切排し、SSAOにも頼らずにどこまで立体感を維持しつつ、トゥーンシェーダーで追い込めるかという事を目標にしました。
 金剛さんはもちろん、おおまかな材質毎にシェーダーを割り当てています。

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 赤丸で囲んである所をご覧ください。心霊写真とかではないのでご安心を。

 それぞれの影の割合、場合によっては影が出ている方向が若干変わっているのがわかるでしょう。
 リアルな事を考えれば、割合はともかく方向まで変わってしまうとチグハグになってしまう、となりますが、アニメをご覧になればよく分かる通り、そうとう大幅に変わってない限り(真逆だったり)しなければ、視聴者はそんなに意識しません。
 むしろ、影が多くなって見辛くなるよりは、嘘だと分かっていても分かりやすいものを好む傾向が強いと考えています。
 なので、肌・髪・服・顔、そして金剛さんの場合は艤装も別シェーダーにし、それぞれの質感に合わせた影の出方を設定しています。
 今回は肌における元々のToonの出方との兼ね合いをどうしようか迷いましたが、そのままにしました。2段階のToonとなっています。

 影の濃さ自体は、AlternativeFullであれば、ヒントテクスチャだけでなく、『シェーディング2』のタブで設定ができます。
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 今回は室内ではなく外撮影、という感じなので影は薄めです。より濃い影にして夕方っぽさを強く出す演出もアリですが、今回は敢えて大人しめにしました。

 照明は途中での変更はなく固定です。
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 MMDでのデフォルト値は154ですが、これだと明るすぎて色飛びの原因ともなりがちです。特にDiffutionやAutoLuminousなどの光系と組み合わせる時には、デフォルト値より低めに設定する事をお勧めします。
 全体的な輝度や彩度はAVIUtlを始めとした編集ソフトなどでも管理できますので、ここでは一番見せたい被写体に合わせておくと良いでしょう。
 もちろん、背景の色合いや輝度によっても変わってきます。白っぽい背景なのに照明を落としすぎるのも良くないでしょうし。その辺りの調整は必要です。

 今回の場合は、夕焼け背景ですので明るめの背景ではありますが、被写体を暗くする事によりコントラストを持たせる事を目指してます。
 全体が明るければOKではなく、明と暗のバランスを取る事が画作りには欠かせません。

 ですがそれでも巨大構造物の影に隠れたりして暗くなってしまったりコントロールするのが難しいケースもあるでしょう。
 そういう時は、一つのケースとしては、セルフシャドウなど余計な影を出しやすいものをカットしてしまう事、もう一つは『Panel Light』の出番です。
 
 今回の動画ではパネルライトを2つ使用しています。
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 1つ目のライトは下からのフォローライトです。2つ目は太陽光の明かりを人物周辺に対してだけ追加するようなフォローライトです。

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 エフェクトをオフにした状態では、これだけ暗くなります。なので最初に照明設定をしてからではなく、エフェクトをある程度調整した上でのMMD標準光源の設定となります。

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 エフェクトONで、パネルライト追加前の状態。

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 パネルライト追加後。

 DiffutionやAutoLuminous(LightSampleing)との兼ね合いを見ながら、それぞれのパラメータの調整となります。
 PanelLightを含め、いくつかの照明エフェクトは、Toonの影方向などには影響を与えません。この場合だとToonの影方向を決めているのはMMD標準照明の方向設定となります(セルフシャドウ系は異なります)。
 そこで、どうしても顔に出てるToon影の方向だけは変えたい場合などは、AlternativeFullの照明を使うと便利です。
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 今回は使いませんでしたが、照明の種類も『標準』『ランバート』と選べますし、最大3つのライトが追加できて便利です。
 フィルライト1はMMD標準照明と同じ方向、2は逆方向、リムライトは文字通り逆光方向となります。

 
■ 光と影と
「照明とは光の当て方ではなく影の作り方である」
というのは、映画『マルサの女』で照明をされていた桂昭夫氏(第11回日本アカデミー賞 優秀照明賞)の言葉だったでしょうか。
 というか、日本のドラマ、特に時代劇では昔から影の作り方に凝っていましたし、日本建築も程よく外の光を取り込みつつ、どう和らげるかという設計に基づいているそうです。
 CGでもシェーディングという言葉にあるように、明るくする為のものではなく影の作り方そのものとなります。

 トゥーンシェーディングは実際の撮影やレイトレーシングに比べるとシビアではありませんが、アニメにおける陰影の作り方、かつ色数が限られた中でどのように表現するかという部分では別の道ではありますが、進化し続けている所でもあります。
 また、昨今のアニメではトゥーンでの3DCG表現において実用化され、特にこの秋のアニメでは多用されています。
 さすがにAutodesk系のソフトと同等のものという訳にはいきませんが、MMDでも近い所まで、誤魔化しを含めていけるのではないか、と私は考えていたりします。
(フリーソフトで追い求めるのであれば、Blenderが良いでしょうが……)

 今回はサワリではありますが、よりセルアニメ的な質感を学んでみようと試みた結果、というか第一歩でもあります。
 今まではシェーダーを割充てて、それで済ましてしまっていたので。

 この辺りの質感の追い求めは、シェーダーを組める人の間では昨年辺りから活発になっています。その結果として出てきているのが、各種シェーダーとなります。
 各シェーダーは個性があり、またそのまま割り当ててもよいものも多いです。が、やはりモデルやシーンに合わせて、シェーダーをカスタマイズするのがベターである事はいうまでもありません。

 サブセット展開をして、材質個別に割り当てる、かつ割り当てるシェーダーを各個調整するというのは手間ではありますが、何も無かった以前の状態よりは簡単になっています。
 最新版のMMEではPMXモデルであれば材質名を読み込んでくれるので、割り当ても簡単になっています。

 質感調整は、これもまた沼ではありますが、一度がっつりやってみて勘を掴み、作る映像に更なる花を添えてみるのもお勧めします。

 今回はサワリ程度の内容ではありますが、以上とします。
 沼は一つだと思ったら大間違いですよ。

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